高所作業研究室の室長のKENです。
今回はロープアクセスのお仕事をご紹介していきます。
日本で『ロープアクセス』という言葉が出てきたのは、ここ数年だと感じます。
以前より日本ではロープのお仕事は『ブランコ作業』と言われてきました。未だにお客様は『あーブランコ作業ね!』と言います。
私も技術的な違いを説明するのが面倒なので、最近は『そうです。』と答えています。
まぁこれがロープ作業についての世の中の認知度と言うことです。
少し昔に遡ってみます。
文献等があるわけではないので、あくまで私が色々な人から聞いて集めた情報であることを承知で読んで下さい。
日本ではおそらく1970年代頃からロープ技術を用いたガラス清掃作業等は行われていたようです。年齢で言うと、現在70歳代前半~60歳代の方が20歳代の頃だと思います。
当時は登山やクライミングの技術を持っている方達が、その技術を用いて作業を行っていたようです。
業歴で考えると約50年です。結構長いですね。
業歴は50年間ですが、驚くことにロープ作業について法律が出来たのは2016年とつい最近です。
法律が出来るまでの数十年は、何の規制も設けられず、技術的な指針もなく、各作業者の自己責任で作業をしてきたと言うことです。
一方海外はどうでしょうか?1900年代前半からロープ作業に近いような作業を行っていた古い写真を見る機会があります。
近代的な技術として進化し始めたのは、1980年代に入ってからです。
1980年代後半頃にはオフショア産業を中心とした会社が中心となって、技術的な指針を示す協会なども設立されています。
その後2003年に国際規格ISOでロープアクセスが規定され、現在に至っています。
海外では規模の違いはありますが、いくつかの協会が主催する技術資格を持つことでロープアクセスのお仕事に就労することとなっています。
irata international https://irata.org/
SPRAT https://sprat.org/
FISAT https://www.fisat.com/fisat/frontpage/
テクニカルな要求値については似たり寄ったりかと思いますが、各地域の特性や法的整備の違い等に併せて運用されています。
上記の資格で日本国内にも技術者がいるのは「irata international」の有資格者です。その他の資格を持っている方もいるかも知れませんがごく少数となっているでしょう。
欧米諸国でロープアクセスの仕事に従事する場合は上記の資格を保持していないと就労できない事が多いです。
一方日本はどうなっているのでしょうか?
先に書いたとおり、日本では2016年に『ロープ高所作業』と言う名称で労働安全衛生法、安全衛生規則の改正が行われました。
それまでは厳密な法律での定めはない中で、ロープ作業を多用する主たる業種の業界団体が技術的教育をしたり、安全に関する啓蒙をしたりしている状況でした。
特にこれと言ったスタンダードもなく時代が進んできたと言っていいでしょう。
現在は『ロープ高所作業』の法律の下、1日間の『特別教育』という教育課程を修了した作業者が作業を行うものとしています。
では、ロープを使った仕事とはどういった仕事があるのでしょうか?
一概にロープを使うと言っても幅がありますが、いくつか紹介していきます。
もっとも作業者が多いのは『ガラス清掃』でしょう。
近年は外壁調査・橋梁点検・鉄塔点検などのインフラの点検業務も増えてきています。
業界で言うと風力発電業界もロープアクセス技術者の活躍の場が多い業種です。
技術的にはロープアクセスとは異なりますが、「樹木の伐採」にもロープの技術が多用され始めています。
建設業界ではまだまだロープアクセスでの依頼は少ないですが、外壁の補修や防水工事、塗装工事などでも利用され始めてきています。
「U字吊り」という技術もロープを使った仕事の一つですが、ここまで含めると、送電鉄塔や電柱、アンテナなどの作業も多く行われています。
ロープアクセスを含めロープを用いた高所作業はあくまで足場の工法の一つです。
組足場や高所作業車、ゴンドラなどと同様に現場の状況や作業内容に併せて使い分ける技術と言うことで、手技として行う作業との組み合わせは数多くあることは上記の仕事紹介をみて頂いてもわかると思います。
私は、ロープのお仕事を全く知らない方達とお話しする場に良く足を運びます。
皆さんから一律に出る質問は「お給料高いんでしょ~!」という質問です。
この質問に私は必ず逆質問で返します。
「あなただったら一日いくらもらったらロープのお仕事しますか?」
この質問への回答金額には驚きを隠せないことが多いです。
私達が日常的に提案している見積もりの金額との格差がすごい…
でも、見積もり出すと高いと言われる。
なぜこのギャップが起こるのかが未だに解決出来ていません。
独立から約9年が立ちますが、この格差に楔を打ち込む努力を続けていますが、なかなか大きな改善にはつながっていません。
この仕事の特殊性の“認知”と“作業者の真のプロフェッショナル化”が必要なのではと言うのが私の最近の見解です。
私が業界に対して出来る貢献は“認知度”UPではないかと思い、活動をし始めました。
今回はロープアクセスの紹介をしてきました。この業界に関わる方が読むと色々思うところはあるでしょう。
次回は日本の法律『ロープ高所作業』について書いていきたいと思います。