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『ロープ高所作業』施行は有効だった?

高所作業研究室室長のKENです。

今回は日本の国内法『ロープ高所作業』について書いていきたいと思います。

ここでは、法律の内容について書くのではなく、この法律がどういった意味を持っているのか、どの程度役に立っているのかについて考えて行きたいと思います。

過去のブログでも書いたのですが、『ロープ高所作業』の法律はつい最近出来たばかりです。

約50年ほど前からロープにぶら下がる作業をしていたにもかかわらず今までは法律がなかった…。

では何故このタイミングで法律が出来たのか?

一言で言うと『多くの方が死んでいる』からですね。

法律とは不思議なもので、危ないという事実が明白でも、人が死ぬ前には法律を作らないのですね。

ストーカー行為などでの警察の対応に似ていますね。ことが起きる前に相談に行っても何も動いてくれない。事件が起きてから動く。

ちょっと話しがずれました。戻します。

ロープ作業での事故は建設業全体の労働災害数からするととても少ない数字です。作業人口の母数が決定的に違います。

しかし、通常の労働災害とことなり、ロープ作業の事故発生はほぼ100%近い確率で死亡災害となってしますことです。仮に一時的に重傷で助かったとしても、その後亡くなられるか、大きな後遺症を残しすことになるでしょう。

基安安発0313第2号 ロープ高所作業に係る安全対策のさらなる推進について(要請)より

上記はH28年当時のロープ高所作業による死亡者数を示したものです。その後の年については『ロープ高所作業』のみの死亡者数をまとめた方向が出ておらず、正確な数字は分かりません。

しかし、私の知りうる限り、H29年、H30年、H31年もほぼ同水準の死亡者数であると思います。

さて、死亡者数が減らないことから法律の施行に至った『ロープ高所作業』ですが、H28年1月1日以降法律施行の成果はみられたでしょうか?

数字上だけとらえると成果はみられてません。

何故このような結果になっているかについては色々理由はあると思います。

そもそも法律は『最高』を定めるものではなく『最低』を定める物だと私は認識しています。

実際に法律施行後の事項事例として公表された内容を見る限り、『最低』を定めている法律すら守れない作業員が死亡に至っているのだと感じます。

はたして、これは亡くなった作業員の方達だけでしょうか?

別のブログで書いていますが、おそらく根本的にいつジョーカーを引いてもおかしくない作業員、事業者の方が大半を占めているのではないでしょうか?

そうだとすると、今後死亡者数は減るどころか、増える傾向になっていくと考えます。

何故かというと、『ロープ高所作業』の法律を中途半端な内容で施行してしまったため、認知だけされて作業者が増えてきているからです。

『ロープ高所作業』は既存の法律の一部改訂ではなく、新設された法律でしたので、せめて「最低」を定めるのではなく、欧米諸国の水準に近いレベルの内容で施行すべきだったのだと感じます。

私はお客様から『命がけの仕事だよね~』とよく言われます。

私は明確に『お仕事ですので、私達は命は掛けてません。』と答えます。一日数万円の賃金で毎日毎日命なんか掛けられませんよね。

命を掛けてやるべき仕事はないと思っています。普通の人がやるなら命を掛けなくてはならない作業を、命を掛けないで出来るような技術を持っているからプロフェッショナルなのだと思います。

一番勘違いしてはいけないのは、法律の水準があがったとしても結局法律はあなたの命を守ってはくれません。

もちろん法律を理解し、遵守することは重要です。しかし、何故死に至ってしまうのか?という本質的な事に興味を向けない限り事故発生の根本は改善に向かわないでしょう?

最後に質問です。

あなたが死んで悲しむ人はいますか?

次回は『墜落制止用器具』と『ロープ高所作業』の関係について書いていこうかと思います。

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ロープアクセスの世界

高所作業研究室の室長のKENです。

今回はロープアクセスのお仕事をご紹介していきます。

日本で『ロープアクセス』という言葉が出てきたのは、ここ数年だと感じます。

以前より日本ではロープのお仕事は『ブランコ作業』と言われてきました。未だにお客様は『あーブランコ作業ね!』と言います。

私も技術的な違いを説明するのが面倒なので、最近は『そうです。』と答えています。

まぁこれがロープ作業についての世の中の認知度と言うことです。

少し昔に遡ってみます。

文献等があるわけではないので、あくまで私が色々な人から聞いて集めた情報であることを承知で読んで下さい。

日本ではおそらく1970年代頃からロープ技術を用いたガラス清掃作業等は行われていたようです。年齢で言うと、現在70歳代前半~60歳代の方が20歳代の頃だと思います。

当時は登山やクライミングの技術を持っている方達が、その技術を用いて作業を行っていたようです。

業歴で考えると約50年です。結構長いですね。

業歴は50年間ですが、驚くことにロープ作業について法律が出来たのは2016年とつい最近です。

法律が出来るまでの数十年は、何の規制も設けられず、技術的な指針もなく、各作業者の自己責任で作業をしてきたと言うことです。

一方海外はどうでしょうか?1900年代前半からロープ作業に近いような作業を行っていた古い写真を見る機会があります。

近代的な技術として進化し始めたのは、1980年代に入ってからです。

1980年代後半頃にはオフショア産業を中心とした会社が中心となって、技術的な指針を示す協会なども設立されています。

その後2003年に国際規格ISOでロープアクセスが規定され、現在に至っています。

海外では規模の違いはありますが、いくつかの協会が主催する技術資格を持つことでロープアクセスのお仕事に就労することとなっています。

irata international https://irata.org/

SPRAT https://sprat.org/

FISAT https://www.fisat.com/fisat/frontpage/

ARAA https://www.waha.org.au

テクニカルな要求値については似たり寄ったりかと思いますが、各地域の特性や法的整備の違い等に併せて運用されています。

上記の資格で日本国内にも技術者がいるのは「irata international」の有資格者です。その他の資格を持っている方もいるかも知れませんがごく少数となっているでしょう。

欧米諸国でロープアクセスの仕事に従事する場合は上記の資格を保持していないと就労できない事が多いです。

一方日本はどうなっているのでしょうか?

先に書いたとおり、日本では2016年に『ロープ高所作業』と言う名称で労働安全衛生法、安全衛生規則の改正が行われました。

それまでは厳密な法律での定めはない中で、ロープ作業を多用する主たる業種の業界団体が技術的教育をしたり、安全に関する啓蒙をしたりしている状況でした。

特にこれと言ったスタンダードもなく時代が進んできたと言っていいでしょう。

現在は『ロープ高所作業』の法律の下、1日間の『特別教育』という教育課程を修了した作業者が作業を行うものとしています。

では、ロープを使った仕事とはどういった仕事があるのでしょうか?

一概にロープを使うと言っても幅がありますが、いくつか紹介していきます。

もっとも作業者が多いのは『ガラス清掃』でしょう。

近年は外壁調査・橋梁点検・鉄塔点検などのインフラの点検業務も増えてきています。

業界で言うと風力発電業界もロープアクセス技術者の活躍の場が多い業種です。

技術的にはロープアクセスとは異なりますが、「樹木の伐採」にもロープの技術が多用され始めています。

建設業界ではまだまだロープアクセスでの依頼は少ないですが、外壁の補修や防水工事、塗装工事などでも利用され始めてきています。

「U字吊り」という技術もロープを使った仕事の一つですが、ここまで含めると、送電鉄塔や電柱、アンテナなどの作業も多く行われています。

ロープアクセスを含めロープを用いた高所作業はあくまで足場の工法の一つです。

組足場や高所作業車、ゴンドラなどと同様に現場の状況や作業内容に併せて使い分ける技術と言うことで、手技として行う作業との組み合わせは数多くあることは上記の仕事紹介をみて頂いてもわかると思います。

私は、ロープのお仕事を全く知らない方達とお話しする場に良く足を運びます。

皆さんから一律に出る質問は「お給料高いんでしょ~!」という質問です。

この質問に私は必ず逆質問で返します。

「あなただったら一日いくらもらったらロープのお仕事しますか?」

この質問への回答金額には驚きを隠せないことが多いです。

私達が日常的に提案している見積もりの金額との格差がすごい…

でも、見積もり出すと高いと言われる。

なぜこのギャップが起こるのかが未だに解決出来ていません。

独立から約9年が立ちますが、この格差に楔を打ち込む努力を続けていますが、なかなか大きな改善にはつながっていません。

この仕事の特殊性の“認知”と“作業者の真のプロフェッショナル化”が必要なのではと言うのが私の最近の見解です。

私が業界に対して出来る貢献は“認知度”UPではないかと思い、活動をし始めました。

今回はロープアクセスの紹介をしてきました。この業界に関わる方が読むと色々思うところはあるでしょう。

次回は日本の法律『ロープ高所作業』について書いていきたいと思います。

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高所作業ってなに?第4話

高所作業研究室のKENです。

前回は人間の一つの特性と安全との関係性について書きました。

このブログを読んで頂いた方の中には、多くの事を同時に意識し適切なバランスを調整出来るという方もいたかも知れません。

しかし、一つの事に集中している状態100%が一番能力を発揮出来ているとすると、“分身の術”でも出来ない限り、100%を超えて200%↗、300%↗と出来ないことはご理解頂けるのではないでしょうか?

さて、この第4話では人間の能力の別の一面と『高所作業』の関係を考えて行きましょう。

みなさんがある一つの事をやり続けると最初に始めた時と比べ、多くの事を意識しなくてもスムーズに出来るようになってくると思います。

これをおそらく「慣れ」と呼んでいると思います。

この「慣れ」は人間にとってとても重要な能力だと思います。

しかし、この「慣れ」は“良い面”と“悪い面”を合わせ持っています。

“良い面”については比較的わかりやすいですね。

最初は不慣れだった作業などが、時間を重ねると共にスムーズに出来るようになっていく事が良い例かと思います。

こちらは第3話で書いた“無意識の領域”を良い意味で使える様になってきたのだと思います。

では、“悪い面”はとどういうことでしょう?

例えば安全との関係で言うと、「最初は高いところが怖かったのにだんだん怖さがなくなっていく」などは、わかりやすい例だと思います。

この“悪い面”の慣れの不思議なところは、危険な作業をしていても起きる現象であることです。

例えば、10階建てのビルの縁に何も安全対策をせず立ち、そのままビルの縁10メートルを往復する。

最初の一往復目はかなりの恐怖で冷や汗が停まらないでしょう。

100人にこの作業を10回繰りしてもらったとしても、墜落するのは0人の可能性が高いと思います。そうそう人は墜落しませんからね。

すると10往復目にはどういった現象が起きるでしょう。

おそらく恐怖はなくなり、意図もたやすく歩くことが出来るようになってしまいます。

これが“悪い面”の慣れの典型だと思います。

ここで、昨年東京労働局が出した安全勧告文書を見てみましょう。

死亡事故災害事例の「経験年数」を記憶して頂き、次に進みましょう。

話しを元に戻します。

さらに『慣れ』にはもう一つの側面があります。

それは『経験値』です。

安全対策を講じずに屋上の縁を10往復出来ると、「何も安全対策をしなくても墜落しなかった」と言う『経験値』を得てしまいます。

こう言った経験値をひたすら積み上げて行くと、同じような作業や環境に置かれた際に『何もしなくても落ちない』となってしまうのです。

最初に恐怖を感じた状況と10往復終わった後の安全性は何も変わっていないのに…。

これが人の慣れの不思議な力です。

では、この慣れによる不可思議な『経験値』にリセットをかけることが出来るのでしょうか?

私は出来ると信じています。

それは、『正しい知識』と『適切な訓練』しかないと思います。

私は…

現場での実務経験を→『アクセル』と呼び、

『正しい知識』と『適切な訓練』を→『ブレーキ』と呼んでいます。

私の所に来て頂く多くの受講生や他社従業員の方や事業主の方のお話しを聞いていると、ひたすら『アクセル』のみ踏んでいる様に感じることが多いです。

その方達のお話しの中に『ブレーキ』が存在しないのです。

先に添付した「東京労働局」の注意勧告の死亡災害事例の方達の経験年数が軒並み10年~30年以上となっていることは、正しく『ブレーキ』が存在しないことを物語っています。

そこで、読んで頂いている方に聞きます。

あなたは『ブレーキ』のない車を買いますか?乗りますか?

『安全』を川の流れに例えると、私は正しい知識や訓練を行い、なるべく川の上流で川に入水したいと考えます。

そして川下に流されないよう頑張って上流に向かって必死に泳ぎます。

しかし、多くの方は川下に滝がある川の下流付近で入水し、特に頑張ることもなく流れに身を任せているのではと思います。

どう考えての滝に落ちていきますよね。

私も含め、元来多くの人は面倒なことはやりたくないと思っているのではないでしょうか?

で、あれば川の流れに身を任せるにしてもかなり上流で入水しないと、デットラインはすぐ間近なのです。

私の結論:正しい知識・適正な訓練無き経験は『経験値』=0

あなた:私はロープアクセス経験20年以上です。

お客様:おー、大ベテランですね~。

あなた:そうですね!今まで事故もありません!

お客様:それは安心だ!プロですね!!

あなた:ありがとうございます!

お客様:ところで、このロープはどれくらいの強度あるんですか?

あなた:・・・、相当強いんですよ(汗)

お客様:そうですよね~。命かかってますもんね~。

あなた:そうですね~えへへ~。

この会話…、このレベルなら早く高所作業を止めた方がいいです。まさしく『知識無き経験値』の典型です。

第4話では『慣れ』について書いてきました。

次回は少し思考を変えて、私の専門領域の『ロープアクセス』の業界について書いていきたいと思います。

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高所作業ってなに?第3話

高所作業研究室の室長のKENです!

さて、前回まではそもそも『高所作業』特性を持つものなのかを書いてきました。『高所作業』を取り巻く環境の構造上の問題も取り上げました。

では、第3話では『人』に注目して考えて行きます。

前回までに申し上げて来た通り、『高所作業』は“目的”ではなく“手段”であることは間違いありません。

とは言え、『作業』である事も承知の事実ですね。

例えば、塗装作業で最終的に求められる「仕上がり」や「品質」は、『高所作業』の場合は「安全」と読み替えられるでしょう。

では、『高所作業』で求められる安全とはなんでしょうか?

端的に表現すると「死なないこと」を求められているのだと思います。

しかし、建設業労働災害防止協会が出しているデータの通り、直近10年程度を見ても、高所からの墜落・転落で年間約140人程度が毎年亡くなられており、その割合は建設業での労働災害死亡事故の半数近くを占めています。

出典:建設業労働災害防止協会

次のデータはどうった作業時に墜落死亡事故が起きているかを示しています。

出典:建設業労働災害防止協会

ここで、『人』について考えて行きましょう。

上記のグラフを集計した方は、「組立作業中」+「解体作業中」で37.0%、「足場上作業中」+「足場上移動中」で56.3%と種類分けしています。

私はこのグラフを見た時にちょっと異なる種類分けをしました。

①「組立作業中」+「解体作業中」+「足場上作業中」が78.1%、②「足場上移動中」が14.9%と分けました。

①、②の違いは何でしょうか?

これは「仕事の構造」と「人間の能力」と深くリンクしていると考えています。

(1)人間は2つの事を同時に考える事は出来ない。

(2)優先順位が高い事柄に意識集中のバランスが偏る。

このマルチタスクの時代、多くの事を同時にこなしていると思える人がいますが、実のところ複数の事を同時に考えているのではなく、思考の切り替えスピードが速いだけなのだと思います。

では、人間には上記の様な”特性“があるという視点で①、②をみてみましょう。

①の3つは「本作業」と呼ばれる作業と「高所作業」をしている、②は「高所作業」のみしている場合での事故発生率ですね。

私も職人として仕事をして来たので、自身の経験をもとに振り返ると下記の通りです。

例えば、「外壁の点検」と依頼を受け、ロープアクセス技術を用いて作業を実施するといった場合、作業を行っている最中の私の頭の中は「点検業務」に80%、「ロープアクセス」に20%と言った意識集中のバランスで、思考を切り替えながら仕事をしていると思います。

これは、受講生の方に同様の質問をしても、感覚値はかなり近いと回答が帰ってきます。

この数字をみると20%の意識配分で高所作業してれば、それは事故って当たり前と思いませんか?

脳みそが2つあって、「点検作業」100%、「高所作業」100%の合計200%が出来れば事故はなくなるのかも知れないですが、ケルベロスには慣れないので、考えるだけ無駄でしょう。

では80-20%の意識バランスが変わらない中でどうしたら安全が担保できるか考えて見て下さい。

色々な答えが出てくるかもしれません。

私の考えは、「意識」している領域の外側である「無意識」の領域を使うこと…です。

では「無意識」の領域はどうやったら使える?

わかりやすい例としては、「お箸」。

みなさんは「お箸」を使う際に、「どうやって使おう」とか「どうやって持とう」とか考えていますか?

いつの頃から考えなくても「お箸」を使えるようになりましたか?

明確に記憶にある人は少ないと思いますが、これが「無意識」の領域を使えている良い例でしょう?

使い始めの頃は、母親から使い方を教えてもらい、怒られ、直しての繰り返しではなかったでしょうか?

これって一言で言うと「訓練」です。

「無意識」の領域を使うためには「訓練」しかないというのが私の考えです。

では、前話まで書いてきた内容と照らし合わせて考えて下さい。

『高所作業』を行う作業員みなさんは、高所作業を安全に行う為の適正な訓練を受けて来ましたでしょうか?

おそらく答えは”No!“ではないでしょうか?

私の結論:『作業』である以上、適正な訓練をしない限り安全は担保できない。

今回は事故発生ロケーションと「人」の一能力に注目して考えてきました。

次回第4話も『人の能力』についてですが、今回お話しした能力とは別の側面にスポットライトを当てて考えて行きたいと思います。

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高所作業ってなに?第2話

高所作業研究室の室長のKENです!

さて第1話では『高所作業』が『作業』と名が付いているが、“目的”ではなく”手段”である事について書きました。

では、“手段”であることは何が問題なのか??について考えて行きます。

まずは構造上の問題について…

例えば、塗装。第1話でも書きましたが、お客様はA社に自分の建物を『塗装』して下さいと依頼します。『塗装』はお客様にとっても、依頼を受けるA社にとっても“目的”となり、そこにお客様は対価を支払っています。

どうやって塗装をするかの“手段”についてはお客様にとっては、正直興味がないところで、値段が安いに越したことはないと言ったところでしょう?

ここでA社は足場や高所作業車、脚立、梯子、ロープアクセス等の“手段“も含めて提案をします。

実はこの“手段”にも大きな費用がかかります。

言われんでも知ってるわ!!と思いますね。

しかし、お客様はここにはお金を払いたがりません。気持ちは分かります。

で、どうなるかと言うと、この“手段”に対しては適正な価格を取れず、結果もちろん必要な教育や資機材へ適正な投資が出来なくなります。

特に建設業の様な縦軸の次数多重下請け構造では、末端の作業を行う会社に安全や教育に投資するお金は下りてきません。

仮に“手段”である『高所作業』であっても『作業』である以上、質の高い人材を育て、適正な装備を使用し、そのスキルに対して適正な対価を取るべきなのだと思います。

私は『安全への投資』や『ハイスペックなスキル』は、お菓子に付いてる『おまけ』の扱いなのだと感じることが多いです。

この長年掛けて培われて来た思考回路はそうそう変わることはないでしょう。

私は講習会で『あなたはどうやって安全は手に入れますか?』と質問します。

多種多様な回答が出てきますが、私の答えは明確。

『お金で買う物です。』

情報、時間、道具、作業のひと手間…等々すべて買うことは出来ます。

ごちゃごちゃ悩んでいる人の多くは、学ぶ事に時間は割かない、講習代が高いと文句を言う、お客さんにちゃんと説明するのが面倒なので、はしょって作業をして自分がもらう金額に自分の作業を合わせる、ではないでしょうか?

私の結論:“手段”である『高所作業』もれっきとした『プロが行う作業』であり、ちゃんと投資すべき『作業』だと思う。

第2話では、『安全』へ適正な投資が出来ない構造上の問題について書いてきました。

次回第3話は『人』に注目して考えて行きます!!

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高所作業ってなに?第1話

高所作業研究室の室長のKENです。これまで10年以上高所作業を専門として活動してきました。ここ数年は自身が開催する講習などを通じて高所作業に悩みを持たれている方と接してきました。

何を書こうか…何か伝えるべき事があるのか…悩んで来ましたが、

結論、言いたいこと、書きたいことを書くことにしました~。

私は高所作業の中でも少し特殊なロープアクセスと言う技術を使った仕事をしてきました。

自身の経験を踏まえ、高所作業が何かを考えていこうと思います。

さて、自分の過去を振り返ってみるとお客様から「うちのビルの屋上からロープで降りてよ。」という依頼は1件もありませんでした。

『高所作業』は読んで字のごとく『作業』なのですが、お客様から依頼を受けて行う『本作業』とは一線を画しているのだと思います。

補修や塗装、清掃等がお客様の言う『作業』であり、高所作業という『作業』はお客様にとってはお金を支払うべき所ではないのだと言うことです。まぁ本作業を行う為の手段であり、どうやって高い場所に行こうが、基本知ったことではないのですね。

では、これがどういった現象を生み出しているかが問題です。

例えば、『塗装作業』。

これはお客様から依頼を受け、対価を受け取る作業ですね。もちろんプロとして依頼を受け納品する以上、仕上がりや見えない部分の施工の品質の高さを求められます。

その為、会社では作業員に塗装の技術を教育し、必要な資格を取得させより高い品質を担保できるよう、人にも使用する材料にも多くの投資を行います。

では、『高所作業』はどうでしょう?

作業と名はついていますが、高所作業についてちゃんと教育を受けたことはありますか?

講習に訪れる人にこの質問をすると、誰からも『高所作業』について教えてもらったことがない…という回答が大半。

死と隣り合わせの作業にもかかわらず、誰にも教えてもらっていないと言うのが高所作業なのです。

驚きですが、現実です。

★今日の結論★

『高所作業』は”手段”であって”目的”ではない『作業』である。

では次回は、”手段”である『高所作業』が生み出す問題を考えて行きたいと思います。

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